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小田原市の富水・栢山駅から歩いて行ける「二宮尊徳生家」では、毎月第2・第4土曜日の午前中に“囲炉裏燻蒸(いろりくんじょう)”という珍しい作業が行われています。
文化財を守るために、囲炉裏に火を入れて家全体を燻すという、昔ながらの知恵。
一体どのようなものなのか、実際に体験してきました。
■ 二宮尊徳生家へのアクセス
- 最寄り駅:小田急線 富水駅(徒歩約15分)/栢山駅(徒歩約20分)
- 新宿から:小田急線で約90分
- 小田原から:小田急線で約10分
- バス :栢山駅からコロナワールド方面行きバスで尊徳記念館前下車
小田急富水駅からスタート


囲炉裏燻蒸は9時スタート。それにあわせて、富水駅には8時過ぎに着きました。
駅を降りてすぐ、線路沿いには井戸が。はやくも水の豊かな町らしい光景です。
小田原市尊徳記念館への道:路地裏はのんびり、県道720では歩道を歩きましょう
駅前の井戸を見たら二宮尊徳生家のある小田原市尊徳記念館へ向かいます。
まずは路地裏を行きます。
訪れたのは4月、道端には小さな水路が幾つかありましたが、意外にも水は枯れていました。
それでものどかで歩きやすい道は、やがて県道720号に合流します。
この道は車通りが多く、しっかりとした歩道は片側だけなので、安全の為に広い歩道側を歩きます。

向こうには箱根の外輪山が横たわっている。

二宮尊徳生家へ到着:囲炉裏燻蒸まであたりを見学

尊徳記念館には、途中で水路の鯉をのぞき込んだりと、寄り道をしながらも富水駅からだいたい15分くらいで到着しました。
まだ時間が早かったのでベンチに座って休んだり、写真を撮ったりします。日陰も多く、きれいな花も咲いていて、屋外も過ごしやすい環境です。
裏にはこんなに美しく豊かな水が。

そのうち、ちらほらと二宮尊徳いろりクラブらしき方々がおいでになりました。
囲炉裏燻蒸の準備
皆さんバケツに水を用意したり、囲炉裏の周りにござを敷いたりします。
また、天井の火災報知機に蓋をします。
よく見ると梁に沿ってスプリンクラーもありました。
ここは県重要文化財に指定されている建物ですから、大切に守られているようです。

準備が行われている間に建物の内外を見学します。
室内には解説プリントが置かれていて、自由にいただくことができます。
この建物は、梁と主だった柱が二宮尊徳の生家のまま、他の部分は新しく直したりしたものだそうで、屋根の茅葺は傷んだところだけを補修して間もないそうです。湿気の多い日本では、北側が傷みやすく、補修個所も北側が多くなるとのことでした。
立派な柱はケヤキ、ダイナミックに曲がりくねった梁は松、どの木も長年煙にいぶされた黒色となり、とても趣があります。
竹すのこの納戸は、すのこの下が透けてみえます。
弱そうに見えますが、人が立ち入る十分な強度があるそうです。

二宮尊徳生家、囲炉裏燻蒸
いよいよ火が入りました。
このクラブの創建の時からのメンバー、という熟練の方が火入れです。
あっと言う間に火が安定します。
すごい!
ほの暗く、重厚で静かな黒色で占められていた室内に、赤々とした火の躍動が生まれます。
ベールのような煙が漂い始めます。
そして燃える木が発するいい香り。
薪は、皆さんの家や畑で剪定した枝や、曽我の梅林の落ちた枝などを使っているそうです。
色々な木をつかうので、良く燃えたり煙が多かったり、時々パチンとはぜたりします。

火は、”あまり燃やしてはいけない”そうです。
建物を保全するための燻蒸なので、煙を出すことが目的なのですって。
古民家の燻蒸とは?
古民家では、囲炉裏の煙で家をいぶす「燻蒸(くんじょう)」が建物を守る知恵として受け継がれてきました。煙が木材を乾かし、腐食や害虫を防ぐことで、梁や茅葺き屋根を長持ちさせてくれます。
囲炉裏クラブ、語りあう

見学なので自由に離れていいのですが、せっかくなので、囲炉裏クラブの皆さんの活動を最後まで見させていただくことにしました。
囲炉裏クラブは何班かに分かれているそうで、この日は10人弱の方が集まっておいでのようでした。見学者もちらほらと出入りします。
みなさん火を囲んで思い思いに座ります。自由に立ったまま、ニコニコ火を眺めている方もいます。
火を囲んで約2時間。
年齢も性別もバラバラの方々が、静かにとりとめのないお話をします。
小田原のこと、尊徳先生のこと、湧水が枯れた原因について、酒匂川が大変な暴れ川だということ、戦争のこと、物価のこと、笑ったり驚いたりしながら、親交をあたため、情報交換をします。
黙って微笑んでいる方もいます。
火ははじめは炎、だんだん熾火ができて、ちろちろと揺らぎだします。
冬は囲炉裏の火だけでは寒く、夏は40度にもなって、この活動も大変厳しいそうですが、今日はちょうどいいとのこと。
煙は出続けているのに、ほとんど煙たさを感じないのは不思議でした。
囲炉裏クラブの方々の火の扱い方が絶妙だからなのかもしれません。

真ん中に火があると、互いの顏をみるのもほのかな煙ごし、炎に照らされてどの顏もあたたかく浮かび上がります。
会話もゆったり、おのずと優しい気持ちになっていきます。
囲炉裏クラブの方たちは、見学者も分け隔てなく受け入れてくれました。
囲炉裏クラブについて
活動内容や開催日程は、小田原市公式サイトの「二宮尊徳生家 囲炉裏クラブ」ページで確認できます。
【二宮尊徳生家 基本情報】
■ 所在地
神奈川県小田原市栢山2065-1小田原市尊徳記念館敷地内
■ 所要時間
10〜15分(囲炉裏燻蒸を見学する場合は+15分〜30分)
■ 観覧料
無料
■ 開館時間
9時〜17時
■ 休み
12月28日〜31日、1月1日〜3日
尊徳記念館へ移動:尊徳の生涯と報徳思想を学ぶ展示

こちらでは、希望すれば大変丁寧な解説をしていただくことができます。
私は以前に解説をしていただき、その細やかさにとても感激した覚えがあります。
今回は二度目で、他の見学者の方が解説を受けているようでしたので、私は解説なしで見学しました。
所要時間は、映像を全部見ると30分ほどかかります。
【尊徳記念館 基本情報】
■ 所在地
神奈川県小田原市栢山2065-1
■ 所要時間
30〜50分(展示をじっくり見る場合)
■ 展示室観覧料
大人200円、小中学生100円
■ 展示室開館時間
9時〜17時(入館は16時30分まで)
■ 休み
年末年始(12月28日~1月3日)
尊徳記念館から善栄寺へ寄り道:歴史ゆかりの人物のお墓にお参り
尊徳記念館を後にして水路などを見ながら少し歩くと、お墓が見えてきます。
善栄寺です。
こちらのお寺には、二宮尊徳のお墓があります。
尊徳は日光の方で亡くなられたので、お墓にあるのは弟が持ち帰った「遺髪と歯」ということです。遺髪の方は、尊徳記念館にも展示がありました。


また、こちらには有名な巴御前と木曾義仲のお墓もあります。

お寺からすぐのところには、二宮総本家屋敷跡もありました。

栢山駅へ向かう道すがらに思う
善栄寺から裏の路地へ出ると、やはり水路があります。
枯れてはおらず、きれいな水がさらさらと流れていました。
栢山駅まではそんなに遠くありません。徒歩で15分ほどです。
平坦な道のところどころに案内板があるので、安心して歩けるコースです。

ところで、このように平坦な土地で水があちこちに流れているのを見ると、一見のどかですが、ここが酒匂川の流域内であることをひしひしと感じます。
この地に生まれた尊徳が、繰り返し氾濫する川に苦しめられながら、飢饉や水害で荒れた村々の再建に尽力した過去を、実感できるような気がします。
栢山に到着

小田急線、栢山駅に着いて今回の旅は終わりです。
この駅名は「かやま」。珍しい読みです。
尊徳記念館へはこの駅からも向かうことができます。
その場合、県道720ではやはり歩道側を選んで歩くか、または路地裏に入って清流の水路沿いを歩くのがおすすめです。
二宮尊徳生家、囲炉裏燻蒸まとめ

小旅行に出かける時、つい車で目的地だけを回り、ちらりと見て終わってしまいがちです。
その表面の体験を、星の数で評価して完結させてしまうことも多いでしょう。
そうなると、次に旅先を探す人は、その星の数だけで行く価値を判断してしまうかもしれません。
けれど家を出て外の世界に触れるということは、本来もっと豊かで、ひとつひとつの歩みをゆっくり味わい、訪れた土地でそこで暮らす人々と一緒に何かを「分かち合う」体験なのだと思います。
今回、囲炉裏クラブのみなさんと温かい時間を共にでき、大変ありがたく、胸が満たされました。
また、駅からゆっくり歩くことで、尊徳が生涯をかけて示した「人々を立ち上がらせる力」を、
この土地の姿や水の流れから感じ取ることができました。
二宮尊徳生家の囲炉裏燻蒸を訪ねた旅は、人々と土地のささやきに耳を澄ませる、優しい旅となりました。
※本記事に掲載している小田原市尊徳記念館・二宮尊徳生家内の写真は、施設に確認のうえ撮影・掲載しています。
囲炉裏の雰囲気を家で楽しむなら
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