旅の途中、駅でPASMOを拾った
駅のホームの左の階段を下りるか、右の階段を下りるか。せっかく旅に出るなら、いつもとは違う側の階段をおりてみよう。そんな風に、その日は普段選ばない側の階段をおりました。
時刻表を見ると、次の電車まで5分ほどあります。
ホームの先の方にあるベンチに向かって歩き始め、すぐにそれに気づきました。
ベンチの背もたれの隙間に、斜めに引っかかった四角いもの。
定期入れ……?
近づくと、それはオレンジ色の定期入れでした。記名PASMOが顔を覗かせています。
名前からしておそらく若い人のもの(はっきりそうとは言えませんけど)。
時は四月。すぐ浮かんだイメージは、定期を購入したばかりの学生さんです。
迷わずつまみ上げ、迷わず駅員さんに届けようとして、そこで迷いました。
届けるには階段を上って改札まで行き、駅員さんとやりとりして、また降りてこなければならない。
5分で電車が来てしまう。
急いではいないけれど、なるべくすんなり電車に乗りたい。
また上まで行くには、身体的にもちょっと足腰が痛い。

駅に届けたら「小田急ありがとうカード」をもらった
それでも落ちていたものを見つけてしまったし、すでに拾ってしまったし、えいやと階段を上って改札口の事務室まで行きました。
窓口の駅員さんに渡すと、
「ありがとうございます!」
と、駅員さんは感謝いっぱいの笑顔。これは旅の幸先もいいと感じた瞬間でした。
次いで「どちらで拾われましたか?」とメモを出され、内心「これは長くなるかも」と思いました。同時に、そういえば拾得物にはいろいろルールがあったな、とも。
「ホームのベンチです。」
「上りホームですか?」
「そう、そうです。(電車きちゃう)」
「上りホームの下り側ですね?」
「そうです、そうです。(ややこしいな)」
「あの、こちらに……」と駅員さんは紙とペンを差し出そうとします。
ああ、そうだ。何か届けたら自分の名前を書くとか、お礼があるとか、そんな仕組みがあったっけ。(いやそれより電車きちゃう!)
「いえ、いいです、いいです。」
わたしはもう身半分去りかけていました。
すると、
「あっ、ではこちらを!!」
若い駅員さんは、まるで王子様がシンデレラに花を差し出すように、白いカードをくれました。

後からふと考えた。「PASMOを拾ったら、あるいは落としたら、どうすべき?」
初めて見るきれいなカードに、しばらくは嬉しさに包まれていました。
でもそのうち、旅先でPASMOを拾ったら、正しくはどうすべきか、実はしっかり把握していなかったことに気づいたのです。
あれで良かったのか。
また、自分が今後落とすこともあるかもしれません。そんな時にどうしたらいいのか。
旅人は急いでいることが多いし、書類を書くのが面倒な時もある。
でも拾わないのも気になる。
落としたら落としたで、せっかくの旅もいまいちな気分に。
これは一度整理しておく必要があるようです。
落とし物を拾ったときの、シンプルな判断基準
旅の途中で落とし物を見つけることがあります。PASMOに限らず、財布やスマホ、片方の手袋、切れた金のネックレスなど、いろんなものが落ちています。
稀に「ロータリーで財布一式を見つけたけれど、面倒で無視した」という話も聞きます。
でも、どの人にもどこかに、落とし主のもとへ無事に戻ってほしいという気持ちが残っているのかもしれません。
そんな時にどう動けばいいのか。実はとてもシンプルです。
駅の中で見つけた → 駅員さんへ(電車に乗ってしまったら車掌さんへ)
ホーム・階段・改札内など、駅の管理下にある場所で拾ったものは駅員さんへ。
もう電車に乗ってしまった場合は、車掌さんに渡せば次の駅で引き継いでくれます。
小田急線で落とし物をした場合や、拾った物の扱いについては、小田急のヘルプセンターで最新の案内を確認できます。 https://www.odakyu.jp/help/?ul_q=お忘れ物について
バス車内で見つけた → 運転手さんへ
バスの中で見つけた場合は、混んでいたり走行中は危ないので、降りるときに運転手さんへ。
例外もありますが、バス会社は車内の落とし物を営業所でまとめて扱うので、これがいちばんスムーズです。
バス停や駅前ロータリーで見つけた → 交番が見えていれば交番へ。見当たらなければ駅か運転手さんへ

バス停や駅前ロータリーは、厳密には駅の外です。交番がすぐ見えるなら、そこに届けるのがいちばん確実。
ただ、旅先で交番を探すのは大変なこともありますよね。その場合は、
- 駅が近ければ駅員さん
- バス停なら、次に来たバスの運転手さんへ
このどちらでも問題ありません。
届けるときの“ちょっとした不利益”について
落とし物を届けると、どうしても少し時間がかかります。駅員さんに場所を説明したり、場合によっては書類を差し出されたり。
また、交番に行ってくださいと言われることも、全くない事ではありません。
さきほどの「ロータリーで財布を無視した」という人の話も、まさにこの“手間を避けた”判断だったのでしょう。
旅の途中だと、
- 電車の時間が迫っている
- 荷物が重い
- 書類を書くのは面倒
- そもそもお礼のことなんて考えてない
こういう気持ちになるのは自然なことです。
でも、書類は任意ですし、どうしても時間がなければ断っても大丈夫です。
届けたことで不利益を受けるような制度にはなっていません。
記名PASMOと無記名PASMOの違いを簡単に

旅先でPASMOを落としたときのことも、少し触れておきます。
記名PASMOは名前が登録されているぶん安心で、再発行ができ、残高も移してもらえます。
落とし主に連絡が届くこともあります。
一方で、無記名PASMOは再発行の仕組みがないため、落としたカードの残高を移すことはできません。カード自体は新しく買い直せますが、残金は戻らない仕組みです。
ただ、拾った側としてはどちらであっても気にする必要はなく、駅に渡してしまえば鉄道会社が適切に扱ってくれます。
もし自分が旅先でPASMOを落としてしまった場合は、まずは落とした可能性のある駅に問い合わせてみると、意外と見つかっていることがあります。
記名PASMOなら再発行で旅を続けられますし、無記名の場合は新しく買い直すだけです。
道を歩いていて落とした、どこで落としたか全く見当がつかないという場合は、交番が最も確実です。拾われたPASMOは最終的に警察に集まる仕組みになっているからです。
PASMOの紛失再発行に関しては公式サイトをご覧ください。公式サイト→PASMOの紛失再発行|PASMO(パスモ)
旅の途中で落ちていたのは、”心の交流”の種
落とし物と出あう時、それは小さな物が小さな声で「たすけて」と言っているようです。
もうそこにいない落とし主の元に、帰りたがっているようにも見えます。
落とした人は、「あ、失くしてしまった」と、やっぱりどこかで嘆いていることでしょう。
拾って、駅員さんに渡す。
たったそれだけ。
それだけで、置き去りにされて片隅に縮こまっている物と、それを案じている人との橋渡しをできるなら、電車を一本遅らせても、今日この旅に出てよかったと思えるかもしれません。
まして笑顔の駅員さんから、こんなに素敵なカードをいただけるなら。


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